アフガニスタン・バーミヤン遺跡の歴史【タリバンはなぜ遺跡を破壊したのか】

世界遺産
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こんにちは。やっす(@yassu_blog)です。
最近中東のアフガニスタンでは民主政権が崩壊し、タリバンが政権を握ったということは皆さんもご存知ではないでしょうか。
そんな中2001年にタリバンにより破壊され、その破壊によって世界遺産に登録された遺跡がアフガニスタンに存在することはご存知でしょうか。
この記事ではタリバンによって破壊されたバーミヤン渓谷の遺跡とその歴史について解説します。
なぜタリバンが自分の国にある美しい遺跡を破壊したのか気になる方は是非最後までご覧ください。
バーミヤン遺跡の歴史を知ると、現在話題となっているアフガニスタンの歴史の概要も知ることができますよ。

また、こちらの記事はyoutubeでも解説しています。

アフガニスタン・バーミヤン遺跡の歴史【タリバンに破壊された世界遺産】

バーミヤン遺跡はどこにあるの?


バーミヤン渓谷は中東アフガニスタンにあります。
アフガニスタンはパキスタンの北、イランの東に位置する内陸の国です。
国土の大半が山岳地帯となっています。
バーミヤン渓谷は首都のカブールから車で3,4時間ほど離れた場所、ヒンドゥークシュ山脈の山中で標高2500mほどの位置にあります。
この近くにある古都バーミヤンは古くからシルクロードの中継地として東洋と西洋の交流地として栄えていました。

ちなみに中華レストランのバーミヤンもこの都市から名前を取っているそうです。

バーミヤン遺跡の歴史

バーミヤン渓谷の石仏と石窟(1976年)
Marco Bonavoglia –投稿者自身による作品
CC 表示-継承 3.0
リンクによる

石窟寺院が開削される

1世紀ごろからこの地方の民族により石窟仏教寺院が開削され始めました。石窟は7世紀ごろまで続いていたと考えられています。
また、このバーミヤン遺跡は仏教寺院であるというのがのちに重要になってきます。
数世紀にかけて彫られ続けたこの一帯の石窟の数は1000以上に上り、優れた仏教美術として評価されています。
特に有名なものが5-6世紀ごろに彫られた高さ55mと38mの2体の大仏です。
55mは名古屋城の天守ほどの高さがありあります。ちなみに東大寺の大仏は18mしかありません。
当時は数1000人の僧がそこで修行しており、大仏は金色に光り輝いていたと言われています。

戦争・内戦の影響を受ける

その後19世紀以降には世界中から多くの研究者などがアフガニスタンを訪れ、バーミヤン遺跡はその多くの仏教美術の美しさから注目を集めることとなります。

しかし1979年に当時のソ連によってアフガニスタンは侵攻されます。
その時のアフガニスタンは、のちにタリバンやアルカイダとなる兵士たちの部隊によってソビエトの侵攻を食い止めますが、ソビエトが撤退した後はそのソビエト戦で育成された兵士同士が争いあう内戦へとつながっていきます。
その際に遺跡の周りにも多くの地雷が埋められるなど、破壊の危機に見舞われます。

タリバンによるアフガニスタンの占領と破壊

Taller Buddha of Bamiyan before and after destruction.jpg
CC 表示-継承 3.0,リンクによる

そして1998年タリバンによってアフガニスタンの大部分が占領されました。
このことによって内戦は終結し、一時は遺跡も破壊の危機を逃れたかと感じられます。
しかし2001年タリバンはこのバーミヤン遺跡がイスラム教の偶像崇拝禁止の規定に反しているとして大仏を破壊しました。
破壊の宣言を出した際には他のイスラム指導者からも批判が上がっていたと言われていますがタリバン政権は批判を無視し大仏を破壊したと言われています。
この破壊により、東西の大仏はほぼ完全に破壊されました。

先ほど述べた通り、バーミヤン遺跡は仏教寺院ですので、中には多くの大仏などが存在します。
しかし、タリバンはイスラム教であり、イスラム教では偶像崇拝つまり、大仏の作成や神の姿を絵にかいて拝むことを禁止しています。
タリバン政権は、イスラム教の教えを絶対としているため、仏教寺院であるバーミヤン遺跡の大仏を破壊したというわけです。

2001年 アメリカのアフガニスタン侵攻

その後2001年9月11日にアメリカで同時多発テロが発生し、その首謀者と考えられているアルカイダのオサマ・ビンラディンをタリバン政権が匿っているとしてアメリカのアフガニスタン侵攻が始まります。
そしてアメリカの侵攻をきっかけに一時的にタリバン政権が打倒され民主政権が成立します。

2003年 世界遺産登録

それ以前からバーミヤン遺跡は世界遺産に推薦されていたものの、紛争によって審議が延期されていましたが、ついに危機にさらされている世界遺産として世界文化遺産に登録され保存が開始されました。

危機にさらされている世界遺産
危機にさらされている世界遺産とは、その世界遺産としての意義を揺るがすような脅威にさらされているような物件のことを呼びます。
その危機が続き、世界遺産としての価値が失われた場合は、世界遺産リストから抹消される可能性があります。現在登録されている物件としては、エルサレムの旧市街やシリアのパルミラ遺跡などがあります。
過去にはカンボジアのアンコール遺跡も登録されていましたが、現在は保存が進み危機遺産からは解除されました。

2021年 タリバン政権の復活

こうして保存活動が進み危機が去ったかに思えたバーミヤン遺跡ですが、2021年にそれまで駐在していたアメリカ軍が撤退を始めたことを気に再びタリバンがアフガニスタン国内を制圧したことでまた危機に見舞われる可能性も出てきました。

まとめ

バーミヤン遺跡はタリバンのイスラム原理主義的な考えの元、偶像崇拝を禁止するイスラム教の教えに反するものだとして破壊されました。

世界遺産はその名の通り、一つの国の財産ではなく、人類としての貴重な財産であるため、今後もバーミヤン遺跡が保存されることを祈り、いつか自由に訪れる日が来ることを願いましょう。

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